2019 No.59「楽園」

2019 No.59「楽園」
2点!/10点(斬新さ1点/5点+娯楽性1点/5点)

2019年 日本 配給:KADOKAWA

著作が「悪人」(2010年)や「怒り」(2016年)に映画化された作家・吉田修一の短編集「犯罪小説集」からの二編を軸にして瀬々敬久監督が映画化。綾野剛、杉咲花、佐藤浩市ら本格派俳優陣により、まっとうな人間が壊れる様、そこに至るまでの痛みや苦しみをリアルに描き、観る者に陰鬱な気分にさせるものの、人間のダークサイド面と、人間が形成する社会の恐ろしさに踏み込んだ作品。地方の集落で少女が行方不明になる事件が起き、集落で孤立する青年豪士(綾野剛)に疑惑が向かう話と、愛妻を病気で失った後も集落内で一人愛犬と暮らす養蜂家の善次郎(佐藤浩市)が、村おこし事業を巡る話のこじれから村八分にされて生活を追い込まれていく話の二つが展開し、差別や疑心暗鬼に満ちた集落(集団社会)に対し、其々追い詰められた人間がどういう行動に出たのかが見応えの大きい人間ドラマで、俳優の演技も秀逸であった!ただ、二つの話をつなげようとした結果、不自然な点が現れ、描かれていない大事な所や伝わってこない所が多く、演技が秀逸だけにとても残念に感じた。要は脚本・演出含めた映画作品そのものに対し、素人の私でも駄目だししたくなる所が多く、残念ながら駄作と断じざるを得ない。奇しくもホアキン・フェニックス主演の「ジョーカー」と公開時期が重なっており、人間がダークサイドに堕ちるドラマとして共通するものがあるが、作品としての出来不出来の差は歴然!本意ではないが、“駄作”と感じた理由を少し具体的に列挙したい。ここからは“ネタバレ”も含むので、ご注意を!本作品をご覧になった方は、私の感じたことを、どのように感じられたのか大いに関心があるので、良ければ感想を聞かせて欲しい!①まずは杉咲花演じる紡に行為を抱く同級生の青年との関係。紡も、最後には彼に好意を抱く過程がないので違和感大有り。また電車の音でかきけされた台詞が「お前の楽園を作れ」という言葉も、作品タイトルを作るためなのか唐突!②次に佐藤浩市演じる善次郎に好意を寄せる集落の久子(片岡礼子)との関係。好意を寄せる過程がほとんど描かれていないのに、不要なシーンとも思える濡れ場も含め描写が長い。混浴風呂に誘った側の久子が、善次郎から迫まられたキスを本気で嫌がる演出も意味不明?③亡くした妻の洋服をマネキンに着せ飾ったり、植栽を続けたり、妻がきっかけで飼いだした犬と触れ合ったりする姿から偏執的・猟奇的な亡き妻への愛情は伝わるも、基本的に穏やかで優しい性格の善次郎が、村八分にされ土地権利のトラブルも重なった暁に、集落の人々を憎み復讐するその変貌ぶりについて描き方が足らず、突飛なものに映った。④最後に、綾野剛演じる青年豪士の立ち位置について、「彼が限りなく怪しいものの、真の少女誘拐犯は分からないまま」でこの作品は十分だと思うのだが、豪士の母親が警察での取調べで、豪士のアリバイの為に本人と口裏を合わせて嘘をついたことや、「思い出してみたらそうだった、、、」と杉咲花演じる紡の回想シーンをラストに入れたことで、「彼が犯人でした」かのような断定的表現になっており、作品の締めとしてもチープな感が否めず、2時間スペシャルテレビドラマにも脚本として劣る感じがした。
繰り返しになるが主要3人の演技が秀逸だっただけに、作品そのものの脚本・演出のレベルの低さが極めて残念に思えた。